夫が亡くなる「一次相続」のときは、妻ができるだけ多くの財産を相続すべきであると私は考えています。
財産の名義は夫でも、もともと実質的には夫婦の共有財産なのですから。
とは言え、妻が高齢でそれなりの財産を保有しているなら、次の相続税も気になります。
妻が亡くなる「二次相続」時の税負担を考慮した一次相続時での財産の引継ぎ方について、基本的なポイントをまとめてみました。
・一次相続より二次相続の方が相続税が高くなる理由
理由は主に5つあります。
二次相続は
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配偶者の税額軽減の適用がない
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基礎控除額が600万円減る
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死亡保険金の非課税枠が500万円減る
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税率がアップすることがある
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小規模宅地等の特例を使えない可能性が高まる
4はなぜ?
相続税は累進税率で、適用税率は「法定相続分で相続したとした金額」を基に決まります。
法定相続人が一人減るので、この法定相続分で相続したとした金額が増え、適用税率が上がる可能性があるからです。
5はなぜ?
子が同居していなかったり(同居親族要件NG)
既にマイホームを持っていたり(別居親族要件NG)することが多いからです。
・一次相続で、妻はいくら相続すべきか(金額)
基本的には、妻の年齢と、妻がもともと持っている財産額によります。
妻が今90歳なら、平均余命は5~6年。
90歳であれば、そこまで多額の財産を相続する必要はないかと思います。 しかし、もし、今60歳なら、平均余命はあと29年もあります。妻の受け取れる年金額にもよりますが、夫死亡時に60歳ならキャッシュで1億円持っていてもいいのではないでしょうか?
老後資金として使うほか、二次相続までは時間的な余裕が十分あるので、
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子や孫へ生前贈与する(暦年贈与、生活費や教育費としての都度贈与など)
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子や孫が住む家を妻名義で買う(金融資産を不動産に変えれば相続税評価額は下がる)
など、これから相続税を減らす方法がたくさんあるからです。
余命宣告をされても、最終手段として、信託銀行の教育資金一括贈与の非課税があります。
贈与税は非課税で移すことができ、かつ、相続税の課税対象からも外すことができます。
・一次相続で、妻は何を相続すべきか(種類)
妻が亡くなるときの相続税を減らすには、夫の相続時、妻は何を相続すればよいでしょうか?
(相続すべきもの)
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今後、減っていく財産
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今後、相続税対策が可能な財産
預貯金などの金融資産を多めに相続します。上場株式や投資信託などは、将来痴呆症になったら、管理に支障が生じます。
(相続しない方がいいもの)
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今後、価値の上がる財産
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今後、収入を生む財産
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高齢化により、管理が難しくなる財産
理由は、将来の相続財産が増えてしまうからです。
自宅も、一次相続で子供が小規模宅地等の特例の適用要件を満たしているなら、子供が相続します。
ただし、子供が妻より先に亡くなると、自宅の権利が、子供の配偶者や孫に移ってしまいます。
そのため、節税より妻の生活の安定を優先し、一次相続で妻が自宅を相続する選択肢もあります。
結論としては、「金融資産を妻に、それ以外を子に」が基本的な考え方になります。