いよいよ12月からストレスチェックの実施が義務づけられます(労働者50人未満の事業場については当分の間、努力義務とされています)が、実施にあたり、費用の負担やストレスチェックを受検している時間の賃金の取扱いなど、実務上、困ることが出てくると思います。厚生労働省から出されているQ&Aを参考にしながら実務上のポイントを解説していきたいと思います。
50人以上の事業場を持つ企業は、以下の三つのステップを実施することになります。これらの流れについては、厚生労働省から[図表1]のような概要が公表されています。
ステップ1
労働者の心理的な負担の程度を把握するための、医師または保健師による検査(ストレスチェック)を受ける機会を希望する労働者に提供すること。
ステップ2
事業者は、(問題ありとの)検査結果を通知された労働者の希望に応じて医師による面接指導を実施すること。
ステップ3
その結果、医師の意見を聴いた上で、必要な場合には、作業の転換、労働時間の短縮その他の適切な就業上の措置を講じること。
[図表1]
□ストレスチェックや面接指導の費用
ストレスチェックおよび面接指導の費用については、企業が負担すべきものになっています。これは、法令で企業にストレスチェックおよび面接指導の実施の義務を課していることから、企業が負担すべきであると考えられているためです。
□賃金の支払
ストレスチェックや面接指導を実施している時間に対する賃金の支払いについては、労使で協議して決めることになっています。しかし、企業にとって従業員の健康の確保は、事業の円滑な運営の不可欠な条件であることを考えると、賃金を支払うことが望ましいでしょう。
□受験喫勧奨
ストレスチェックは、企業にその実施が義務づけられている一方で、従業員には受検義務はありません。そのため、従業員に強制的に受検させることはできず、また受検しないことで懲戒処分を行うこともできないとされています。これを踏まえた上で企業としては、従業員が健康で安全な環境で働くことができるようにする安全配慮義務を負っていることから、従業員に受検するよう促すことが求められています。どの程度の勧奨を行うかは企業の状況によって異なるため、その方法、頻度などについては衛生委員会等で調査審議をして決めることで問題ないとしています。
□労働基準監督署への報告
ストレスチェックは実施後、労働基準監督署への報告をすることになっています。これは、ストレスチェック実施後、面接指導の対象者として選定された従業員が面接指導を希望しなかった場合であっても、労働基準監督署への報告の必要があります。なお、50人未満の事業場でストレスチェックを実施した場合にはこの報告義務はありません。
企業としては、今回のストレスチェックを平成28年11月30日までに実施する必要があります。そのため、いつ頃に、どのような手段で実施し、その際の賃金等の取扱いはどのようにするのか等、具体的な運用方法を決めていくことが大事だと思われます。