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劣後ローンを利用した資本強化貸付について

新型コロナウイルス感染症の影響が続く中、経営者の皆様は事業の発展、維持に向けて様々な試みをしている事かと思います。

その流れを受けて今、日本政策金融公庫から新型コロナウイルスの影響を受けているスタートアップ企業、事業再生に取り組む企業を対象にした新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付という劣後ローンが出ています。

今回は劣後ローンの基本的な説明と日本政策金融公庫が行っている新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付の概要について説明したいと思います。

 

劣後ローンとは

劣後ローンとは他の特定の債権よりも支払の優先順位が低いローンのことを言います。

この劣後ローンを利用するとどのようなことが期待できるのでしょうか?

会計上では劣後ローンも通常の債権も同じく負債という扱いになります。しかし金融機関にとってみれば貸したお金が劣後ローンより先に返済されることが保証されているわけですから、劣後ローンによって借り入れたお金は会社の資産と実質的に同じであると言えるわけです。そのため金融機関の資産査定上において、劣後ローンは会社の自己資本として扱われ、通常の融資が受けやすくなるという効果が期待できます。

 

新型コロナウイルス感染症対策挑戦支援資本強化特別貸付(新型コロナ対策資本性劣後ローン)の概要

<対   象>

・J-Startupプログラムに選定された企業

・中小企業基盤整備機構が出資する投資ファンドから出資を受けた方

・中小企業再生支援協議会の支援を受けて事業の再生を行う方

・中小企業基盤整備機構の支援を受けて事業の再生を行う

・事業計画書を策定し、民間金融機関と協調支援体制を構築している方※

※融資後1年以内に民間金融機関から資金調達が見込まれる方

 

<融資限度額> 7,200万円

 

<返済期間> 5年1カ月、10年、20年のいずれか

 

<利   率>

・融資後最初の3年間は税引後当期純利益を問わず0.95%

・税引後当期純利益が0円未満の場合0.95%

・税引後当期純利益が0円以上、返済期間が5年1ヵ月、10年の場合3.30%

・税引後当期純利益が0円以上、返済期間が20年の場合4.70%

 

<担保・保証人> 無担保・無保証人

 

<特   徴>

・一定期間経過後に一括返金

・融資後5年間は期限前返済が原則できない

・融資後毎年経営状況の報告が必要

・金融機関の資産査定において自己資本とみなされる

・申込時に事業計画書を提出する必要あり

 

以上が日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローンの概要となります。

前述した劣後ローンとなっておりますので、金融機関の資産査定において過小資本を解消し、財務体質を強化することができるのが最大の特徴です。日本政策金融公庫と民間金融機関が協調支援することで中小企業の資金繰りを改善し、取引先金融機関から継続支援が受けられるようにするのが目的となっております。

また業績に連動した利率を採用しており、業績悪化時には利息負担を軽減できます。また月々の元金の返済がないため借り入れた資金を事業の成長のために積極的に活用することができるのも特徴の一つとなっております。

ここで実際に劣後ローンを活用した例を紹介したいと思います。

 

<事例1>

企業概要:不動産業者を中心に家具・室内装飾等のレンタル事業を展開

 

融資内容:

足元は増収増益、大手不動産販売会社からも注目を受けている事業であり、アフターコロナを見据えて、地元金融機関からの金融支援は不可欠。メインバンクである信用金庫と、日本政策金融公庫の新型コロナ対策資本性劣後ローンの趣旨が合致し、協調で融資を実施。

 

企業課題:

・大手不動産業者からの受注増に向けて、家具の在庫を積み増すための資金が不足。

・取引金融機関からの追加融資を受けるには債務超過の解消が必須。

・新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、不動産市場の同行は当面不透明な状況にあり、可能な限りキャッシュアウトは抑える必要がある。

 

支援効果:

・実態自己資本がプラスとなり、取引金融機関から円滑に資金調達が行える体制を構築。

・一括返済のおかげで毎月の返済負担が軽減され、調達した資金を事業拡大に積極的に活用

・協調支援を実施した信用金庫が取引先を紹介など、融資後のアフターフォローも積極的に実施

 

<事例2>

企業概要:

地域随一の老舗として、消費者から幅広く支持されている食事処。地元でとれる四季折々の山海の幸を生かした料理の数々が人気。新型コロナの影響で客足が減少し、赤字転落。

 

融資内容:

・人件費等経費削減に取り組む中、影響が終息するまでの長期的な運転資金の確保が必要。

・日本公庫は財務基盤強化とキャッシュアウト抑制のため劣後ローンで応需。

・当資金が呼び水となり、地方銀行及び信用金庫が協調で支援体制を構築。

 

企業課題:

・新型コロナの影響で客足が大幅減少、個人客は改善傾向も団体客の回復は見通し立たず。

・新型コロナウイルス感染症の影響が収束するまで先行き不透明な状況。

・継続的に資金調達を行える体制構築が急務

 

支援効果:

・一括返済のおかげで返済負担が軽減し、資金繰り

・自己資本に厚みが増し、地元金融機関からの融資が受けやすくなった。

・取引金融機関は金融支援だけでなく、事業計画の成就に向けた経営面のサポート等を確約。

 

いかがでしょうか?いずれの企業も期限後一括返済のおかげで月々の返済が抑えられ、財務基盤が強化されたことで他の金融機関から融資が受けやすくなりました。資金調達のために債務超過を解消したい、アフターコロナを見据えて事業転換の資金を用意したいという方は、ぜひご検討下さい。

2021年06月28日

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